貼り箱のうまれるところ
貼り箱の物語
作品のそれぞれにストーリーがあるように、パッケージにも関わる人や技術、工場の立地する土地や環境、素材の選別から流通に至るまで、それぞれに物語があります。例えば、貼り箱は、どこからどのように生まれてきたのでしょうか。ちょっと考えると、謎めいていますよね。そもそも貼り箱の「貼り」って、何だろう。不思議な名称です。今回は、そんな貼り箱のストーリーです。
表面に紙を貼るから貼り箱
貼り箱とは、芯となる箱の表面に、和紙や化粧紙、印刷された紙などを貼ってつくる箱のことです。表面に紙を貼ることで高級感を出し、箱としての表現の幅が無限に広がります。貼る素材も多種多様です。パッケージの専門店にいくと、たくさんのサンプルが置いてあります。手に取ってみてください。色やデザインだけでなく、素材も多彩で、触感も全然違います。光沢のあるもの、マットなもの、凹凸感があるもの。好きな人は、いつまで見ていても飽きないでしょう。
紙を箱に貼る技術
表面に「紙を貼る」というイメージは湧きにくいですよね。一体、どのようにして作るのか。
試しに小さな段ボール箱に折り紙を貼ってみてください。実はかなり難しい作業です。箱と紙の位置関係、箱の芯の素材、紙の質、温度や湿度、のりの種類、押し付ける圧力など、多くの要素を正しく合致させないと、きれいな貼り箱はできません。なので機械で全自動という訳にはいかず、複雑になればなるほど、たくさんの手作業が必要となります。
例えば、複数の異なる種類の紙の組み合わせ、曲面への貼り付け、複雑な形状やデザインへの対応など、箱の意匠もさることながら、作り方(工程)のデザインにも創造力が必要とされます。それぞれにおいて、工場のセッティングは変わります。手持ちにある機械や道具を駆使しながら、チームがそれぞれの役割を果たして、多種多様な箱作りに対応しているのです。
道具や治具が企業のノウハウ
人の手が介在するのですが、やはり道具や治具はものづくりに欠かせません。治具とは、加工や組立ての際、部品や工具が使いやすいように位置決めしたり固定する補助具です。各工場には、それぞれに培ってきたノウハウがあります。正確に、効率的に、無駄なく、継続的に貼り箱を作り続けるには、つくる箱に最適化した製作工程とそれを実現する設備や道具が揃っていないければなりません。もちろん、それを使いこなす職人やスタッフの存在も大事です。
工場に行くと、本当にたくさんの設備や道具があります。特注で作られたものも多く、特別な用途に合うように、自分たちで工夫して自作するものも少なくありません。
箱の品格
貼り箱の良し悪しは、細部を見ればわかります。良い工場で作ったものには、凛とした品格がある。接着の仕方を見れば一目瞭然。糊でつけたというよりは、最初からそうであったような自然な感じです。ブレがないし、筋が通っている。逆に、品質の悪い貼り箱は、何か気の抜けた様子になります。接着がいかにも「糊付けした感じ」があって、ちょっと不細工です。
箱の内側にこそ、品質が見えます。きちんとした職人さんは、表面には見えないところにこそ、こだわります。工場のものづくりの姿勢や高い技術力は、日々の小さな努力の積み重ねの上に出来上がっているのです。
「包む」をつなぐ
パッケージ作りを発注してくださるお客様とお話ししていると、その製品や作品のストーリーに心が惹かれます。発注者の背景、その土地柄、製品の由来や、その製品の用途や込められた思い、デザインした人や、作った工場の職人たち、マーケティングや営業に関わる人たち。たくさんのご縁が繋がって、この製品があるのだと感じます。
私たちがモットーとしている「包むを創る」とは、その意味で製品や作品を包むだけでなく、お客様の物語を包むことだとも思っています。
そして、同時に、私たちの役割は、パッケージの作り手の物語をお客様に繋げることでもあるのです。納品するのは出来上がった箱ですが、箱にもたくさんのストーリーが詰まっています。
パッケージに包まれた製品や作品を手にする人たちに、少しでも幸せが届きますように。そんな関わる人たちのささやかな祈りの連鎖を、感謝の思いと共に、丁寧につなげていきたいと思います。